レビー小体型で歩行が悪くなった

 レビー小体型の治療をする上で、もっとも意識しなくてはいけないこと。
それは…薬剤過敏性です!

 

 レビー小体型の方がドネペジル(中核症状改善薬)を標準量である5mgを内服して数ヶ月後に、歩行が不安定で転びやすくなるということがあります。
 脳の中でアセチルコリン(記憶)とドーパミン(関節の滑らかな動き)はシーソーのようにバランスをとっているという考え方があります。ドネペジルのような中核症状改善薬によって人工的にアセチルコリンが過剰に増えると、シーソーのバランスが崩れてドーパミンが相対的に欠乏し、パーキンソン症状が悪化すると言われています。

 

レビーで歩行が悪くなったら

 

 薬剤過敏があるレビー小体型にとって標準量の5mgが過剰なのでは…と河野先生はドネペジルを微調整して少量で投与し、どのくらいの量であれば安全に使えるかと苦心されたようです。その結果、平均的に安全に使える量は1.5mgであると判断したとか。その観察眼の鋭さ、「そんな微量で効く訳がない」と一部の専門医に笑われるような微量の調整をしてでも患者さんを改善させようとした執念には、頭が下がります。

 

 この副作用について注意をしなくてはいけないのは、副作用の出現がすぐに起こらないところです。例えばリバスタッチパッチという中核薬でも歩行障害が出ることがありますが、こちらは開始して数日(2週間以内)と比較的速やかです。新しい薬を始めて数日後に歩行が悪くなったら、家族も副作用では?すぐにピンときますね。ところが半年たってではどうでしょう?その特徴を知らなければ、医師も家族も副作用を疑いにくいのです。
 一部の医学書には「治験データでは、ドネペジルは必ずしもパーキンソン症状を悪化させていない」などと記載されていますが、治験は多くの場合長期間の追跡を行っていません。データを見ていても見えてこない真実が、患者さんを年単位で真摯に診ているで見えてくるのだ、と教えられます。

 

 最も残念なパターンは、
「先生、薬を飲んでいるのに、症状が進んでいます。歩行が悪くなってきました。」
「認知症が進んだんですね。それでは薬をもっと増やしましょう。」
と薬を更に増量されてしまうことです。5mgが過量で副作用で歩行が不安定になっている方が10mgに増やされてしまったら、これはもう寝たきりになれと言っているようなものです。

 

レビーで歩行が悪くなったら

 

 私の担当患者さんは、副作用を訴えて薬を減らすように主治医にお願いしたところ「この薬は一定期間で増やすことになっているんです。」の一点張りだったので逃げ出してきました。娘さんがお母さんの命を守ったのです。

 

 当初はドネペジルしか認知症に使える薬がありませんでしたが、現在は他に処方できる薬があります。レビー小体型が疑われる場合には、あえてリスクをおかさない方がよいので、ドネペジルは避けた方がよいと考えます。