減薬するために大切なこと

「言うは易し 行うは難し」

 

 現在多くの高齢者は、薬を飲み過ぎているのが実情です。特に認知症の薬は脳神経系に作用することもあり、副作用が少なくありません。
介護現場を取材されているライターの東田勉さんも、「認知症の問題は突き詰めれば薬害の問題。」とはっきり指摘されています。

 

 しかし薬を減らすのは、現場で試みると案外大変なのもまた事実。どこに大変ポイントがあるのかを考えながら、一緒に解決策を考えていきましょう。

 

●薬の副作用を知る

 

 一度症状を訴えたら薬が処方されて、なんとなくそのまま処方が続いていた…。こんなケースは少なくありません。この‘なんとなく継続処方’に対しては、はっきりと副作用のリスクを伝えることで、すんなりと減薬・休薬に応じて頂けることが多いです。
「そもそもそんな副作用があると知っていたら、飲み始めなかった。」という方もいるでしょう。余計な薬を開始しない、必要時に使っても期間限定とする、という心がけも大切ですね。患者さん側からも「薬はできればあまり増やしたくないんです」という意思表示をする方が賢明です。

 

減薬するために大切なこと

 

●診療の目的は処方ではないことを理解する

 

 医者の正直な心境として「わざわざ受診してもらった以上、何らかの解決策を授けなくてはいけない」という使命感(プレッシャー?)を感じているものです。
私自身、一人の医師としてその心境は非常にわかります。診察をして薬の処方が不要であり、患者さん本人が説明に納得した時でさえも、最後にうっかり「ではお薬出しておきますね。」と反射的に口走ってしまったり、そのまま帰ってもらうことにそこはかとない申し訳なさを感じてしまうのです。患者さんや家族からも「せっかく来たのに手ぶらで帰るの?」という雰囲気を発せられることもあり。

 

診療の成果=薬の処方 
減薬するために大切なこと

 

無意識のうちにこんな図式ができていないでしょうか。

 

 診療の本来の目的は、医療の適否を判断したり療養の助言をすることも含まれるはずなのに、それらが粗末なために唯一の形ある処方箋が診療後のお土産のようになってしまうのです。高齢者は自己負担が1割と低負担です。「安くもらえるなら、もらわにゃ損・損!」とばかりに薬を処方してもらおうという状況に陥りがち。
しかしこの図式を崩さなければ、減薬は決して進みません。安くもらった薬と引きかえに健康を差し出しては本末転倒ですね。

 

 

●かかる医療機関を出来るだけ絞る

 

 症状ごとに専門科や医療機関を分けてかかっていると、薬はどんどん増えていきがち。
各科の医師が上のような心境で1種類、2種類と薬を出していき、全ての科の薬を足すとエライ種類数になっていた…となりがちなのです。
この解決手段として「よほど専門性が高い科でなければ、かかりつけ医に一括して処方してもらう」というのも一つ。かかりつけ医に処方全体を見渡してもらい、薬の中での優先順位づけのお手伝いをお願いするのです。「××のことしか分からない」という専門科の医師は、得てして他の科の副作用に無関心となりがちです。もしAという薬の副作用に対してBという薬が出ている場合、AをやめればBも飲まなくてよくなる可能性があるのです。

 

減薬するために大切なこと

 

●「受け容れる」「つきあう」姿勢をもつ

 神経内科医として、副作用による弊害に警鐘を鳴らしている中坂義邦先生は、こんな風に書かれています。
『患者の訴えや症状に対して医者が薬ですべての症状をコントロールしようとすると、逆に誰にもコントロールできないカオス状態に陥ってしまうのです。』(ブックマン社パーキンソン病少しずつ減薬すれば良くなる!より)

 

 加齢性の変化として、すべての臓器の働きは低下していきます。60歳までは若々しく年齢を感じさせなかったでも、70歳前後になると「あれ?」という風にあちらこちらに不具合が出てくる方の方が多いでしょう。
 そんな時に1対1対応で症状ごとに薬を出してもらい見直しをしなければ、80歳台には間違いなく薬の種類は2桁になっていきます。多くの場合、加齢に伴って出現する症状を100%解決してくれる薬は存在しません。2桁の種類の薬を飲んで副作用が出ても、もはやどの薬の副作用なのか、新たな異常症状なのか、本人にも医療者にもさっぱりわからない状態となってしまいます。
 薬を減らすことを提案した時に、不安を口にする患者さんは少なくありません。薬の存在が、心細い患者さんの精神的なよりどころになってしまっているのです。向き合うべきは個別の症状ではなく、薬にすがらざるを得ない心細さや不安なのかもしれません。

 

 薬には、プラセボ効果というものがあります。プラセボと呼ばれる偽薬であっても、患者さんが本物だと信じて(効くと信じて)飲むことで、一定の改善効果があることがわかっています。どうせ同じ薬を処方してもらうのであれば、最大の効果を引き出したいもの。そのような意味でも、「この先生の薬なら効きそう」と本人が自然と思える、よい信頼関係を築ける医師を主治医にできればいいですね。

 

減薬するために大切なこと