中核症状改善薬の使い分け

 認知症=中核症状改善薬を使うことではありません。こう思い込んでしまうと、現場での悲劇がスタートします。
中核症状改善薬には、多かれ少なかれ興奮性があります。怒りっぽかったり時に手を挙げるような強い陽性症状がある場合には、中核薬の開始ではなく、抑制薬によって穏やかにすることを最優先にしましょう。

 

 ある程度穏やかになって初めて「どの中核薬を選択するか」を考えます。ここではざっくりと4種類の薬の特徴を書いてみます。

 

●ドネペジル(アリセプト)

 人工的に作られた化合物で、前頭葉を賦活する作用は強力です。それゆえ、副作用も強く出てさじ加減が難しい。」
中核薬の使い分け

 

脳の神経伝達物質であるアセチルコリンの分解を抑えることで、アセチルコリンの量を増やします。
 平川亘先生の例えは「斧 おの」!
中核薬の使い分け

 

切れ味抜群ながら破壊力もあり、取り扱い注意!
「とりあえずアリセプト!」というノリで処方してしまうと、致命的に状態を悪くしてしまうリスクを秘めています。
合っているタイプ:アルツハイマー型で、易怒や妄想がないタイプ

 

●リバスタッチパッチ・イクセロンパッチ

 シールのように胸や背中に貼るタイプの薬です。

 

中核薬の使い分け

 

「皮膚に貼って…効くんですか?!」と驚かれることが多いですが、アセチルコリンの分解を抑える効果は比較的強力です。

 

平川先生は、意外と切れ味が鋭いとのことで「ナイフ」に例えられています。
中核薬の使い分け

 

効果も副作用も出現が早い。(2週間以内)

 

7割弱の方でパーキンソン歩行を改善する効果があるとされています。
合っているタイプ: レビー小体型認知症, 歩行障害があるタイプ

 

中核薬の使い分け

 

 実際にパッチを貼るようになってから、パーキンソン歩行がシャキッと改善した経験があります。歩行改善のメカニズムについては、パッチ使用により脳の前頭葉内側面の血流が改善するためという説,運動に関するドーパミン回路を賦活する説があります。
それ以外にリバスタッチパッチには覚醒効果もあり(中脳や視床を賦活する)、平川先生が、せん妄などの意識障害の改善にリバスタッチパッチを活用される方法も提案されています。嚥下を改善する効果も報告されており、やはりレビー小体型とは相性がいいと言っていいでしょう。
至適用量 9mg以下
効果もあるけれど副作用も…という場合に、端を少し切り落としたり、半分だけ貼るなどの用量の調節を家族しやすいこともメリットの一つです。

 

●レミニール

この薬は、ヒガンバナ科のスノードロップ(マツユキソウ)の成分であるガランタミンから作られています。
中核薬の使い分け

 

ドネペジルが人工的にアセチルコリンを単独で増やすのに対し、レミニールは自然抽出物のためか、脳内の他の神経伝達物質であるドパミン,ノルアドレナリン、GABAなども全体的に底上げしてくれます。

 

中核薬の使い分け

 

 一言でいうと…バランスがよい薬です。神経内科が専門のコウノメソッド実践医である中坂先生も「(即効性という意味で)効果が強くなくて、そこがよい。」とコメントされています。長期戦に強いためです。
 平川先生の例えは「はさみ」
中核薬の使い分け

 

合っているタイプ:患者さんが若くつき合いが長期になりそうな時
また脳血管性認知症の方でも、血流低下の影響で認知機能が低下するため、まんべんなく神経伝達物質を底上げしくれるレミニールは相性がいいと言われています。河野先生は、失語がある方の発語を促す効果もあると書かれていました。

 

●メマリー

 4種類の中核薬のうち、他の3種類がアセチルコリンの分解を抑えて増やす薬であるのに対し、メマリーだけは機序(メカニズム)が異なります。NMDA受容体という部位に作用するという異なる機序で働きます。そのため他の3種と併用が許可されてはいます。

 

副作用がどこから飛んでくるかわからないという意味で河野先生は‘魔球’と評されています。

 

中核薬の使い分け

 

 この薬で鎮静に傾く方がいるという理由で、怒っている方に最大量で処方されているケースがありますが、逆に興奮や妄想という副作用を引き起こすこともあり、コウノメソッドではそのような使い方は推奨していません。
メマリーは、開始時にまず使うというよりは、他の中核薬でうまくいかない時に、少量から慎重に開始するというスタンスです。

 

合っているタイプ: 意味性認知症(前頭側頭型変性症の1タイプで、失語症状が特徴)の日常生活動作の改善
メマリーの強みとしては、かなり進行した状態の方でも効果がある方がいるという点です。