認知症の治療は順番が大切

 

 アルツハイマー型、レビー小体型、ピック病(前頭側頭型)、脳血管型の4タイプがあるということを説明してきました。今回はいよいよ大切な治療についてです。

 

 詳しい薬の説明などはここではしませんが、最も大切な考え方についてお話しようと思います。
認知症診療において、大切なこと。それは‘順番’です。
 これを理解するには、認知症症状について頭の中を整理することが必要です。認知症の症状は、大きく分けて3つのグループに分けられます。
●中核症状(記憶・認知機能)
●BPSD(行動・心理症状) 陽性症状+陰性症状

 

 認知症=もの忘れの病気、と思われているくらいですから、中核症状というのは記憶力や判断力などが落ちてしまう症状を指します。それ以外に、そこから波及して出てくると言われる症状を、BPSD(行動心理症状)以前は周辺症状、問題行動なんて呼んでいました。たとえば興奮してしまう、介護に抵抗する、暴力を振るう、幻視や妄想、徘徊などの症状は「陽性症状」と言われ、脳内のエネルギーが過剰で起こると言われます。一方で、やる気がなくてボーっとしていたり、ウツラウツラ寝てばかりいる、うつっぽくて食事をしないなどの元気がなくて心配な症状は「陰性症状」と言われ、エネルギーが不足して起こります。
 まとめると、認知症症状は、記憶などの中核症状と、陽性症状と陰性症状からなるBPSD(周辺症状)という3つのグループからなる、と覚えて下さい。薬を飲む時には、この薬は3つのグループのどこを改善する薬なのかな?と考えるのです。

 

 薬によって脳内のエネルギーを足す薬、エネルギーを抑える薬があります。大事なことは、一般的に‘認知症の薬’と言われるのは、中核症状を改善する薬ですが、これは多かれ少なかれ興奮性がある、ということです。

 

認知症の治療は順番が大切

 

 元々怒りっぽくて大変だったおじいちゃんが、記憶をよくするようにということで興奮性がある薬を飲まされてしまったら、どうなると思いますか??そうです、火に油を注ぐ形になり、手がつけられなくなってしまうリスクがあるのです。私の患者さんは、前医に中核薬を処方された結果、家族に向かってハサミを振り回すようになりました。

 

ですから、少しでも怒りっぽい傾向がある方に中核症状を改善させる薬を考えている場合には、事前に穏やかになる薬を飲んでもらって脳内のエネルギーを鎮めてから開始する、とか、せめて脳のエネルギーを抑える薬と同時に中核症状を改善する薬を飲むようにしないといけないのです

 

認知症の治療は順番が大切

 

 医療者は、長谷川式の点数など記憶がどうか…ということを成績表のように見てしまいがちですが、一緒に暮らしているご家族のあなたからすれば、記憶以上にご本人がニコニコと穏やかな笑顔を見せてくれていることの方が嬉しいですよね。穏やかさが1番、記憶力をよくするのはその後です。