軽度認知症外(MCI)への介入

運転免許の書類提出のために初めて来院した70歳台半ばの男性。

 

MCIにすかさず介入

 

妻いわく、最近それなりにもの忘れをするとのことです。自分でも「言葉が出てきそうで出てこない…」という自覚あり。

 

大事なポイント)
・令和になったばかりだというのに、元号が答えられません。
・野菜を10個言う設問で「大根」を3回ほど繰り返して言ったり(直前のことを忘れている)、野菜を言っている途中に「さくら」と言ったり(記憶が混在している状態で、保続といいます)。
 長谷川式は23点でした。75歳という年齢を考えると低いと言っていいと思います。
・バックの駐車など、以前は一発でピタっと止められたのに、最近はうまく駐車出来ない。
 若い時から何回も切り返さないと駐車できない私と違い、この方元運転手でした。プロなのです。昔の職業や以前の状態との比較がなければ、スルーしてしまっていたかも。

 

・時計の針の長針と短針が逆。(判定が少し厳しすぎる?)
MCIにすかさず介入

 

この2点から、この方なりに空間認知能が低下している?と考えます。
診断: MCI(軽度認知障害)〜アルツハイマー型初期

 

MCI(軽度認知症外)の定義は、もの忘れがあるが、生活は自立している状態です。

 

 MCIについては、標準医学では治療法として確立されたものではありません。
「診断したところで治療がないのだから、診断する意義に乏しい」とまで言う医師もいます。MCIは数年以内に5-10%が認知症に移行し、20%が正常に復帰するというデータがあります。

 

 しかし、数年後に自分がどちらに転ぶかわからない、治療薬もない…という状況でポンと突き放された時の本人と家族の心細さは、想像に余りあります。不安を感じている割合は、認知症でない人は4%, MCIで52%, アルツハイマー型では16%というデータがあります。MCIでは認知症の方よりも不安が大きいということは覚えておきたいところですね。当院では、よくなるための選択肢を示したいと考え、生活習慣改善のアドバイスに加え、Mガードについての情報提供を行っています。

 

 この段階では本人も家族もひどく困っている…という状態ではないので、免許書類提出の件がなければ受診しなかった可能性が高いです。内心気が進まない件で受診して下さったご本人とご家族が、「あの時あそこに行ってよかった!」と心から思えるように、希望を渡したいと思います。