本当にレビー小体型認知症?

 神経内科医の中坂義邦先生(新横浜フォレストクリニック)が警鐘を鳴らされています。
パーキンソン病の薬の副作用で「認知症みたいにされている」ケースが多いと。
薬の副作用で精神症状が強く出て、認知症と診断されていると言うのです。

 

 パーキンソン病は、中脳の黒質という部分の変性によってドーパミンという神経伝達物質が欠乏する原因不明の疾患です。振戦(手が震える) 固縮(関節の動きに滑らかさを欠く)無動(動作が遅い)と歩行障害(小刻み歩行・すくみ足)という特徴的な症状が出てくる疾患です。100人のパーキンソン病の方がいれば、100通りの症状があると言われるほど、その症状の出方は多彩です。
 パーキンソンの薬は、このドーパミン欠乏に対してドーパミンを補充する薬ですが、量が多すぎることで、体の動きはよくなるのと引き換えに、幻覚や妄想という精神症状が前面に出てくるケースが多く見られます。中坂先生はこの状態を「ドパミン中毒の状態」と表現されています。特に高齢者では、加齢性変化として神経伝達物質がゆるやかに減少しており、ちょとしたことでこのバランスが崩れて副作用が出やすいハイリスク群といえます。

 

 薬の副作用に着目しなければ、家族・医療者の双方が「認知症を発症した」と思っても不思議ではありません。そこで認知症の中核症状改善薬が処方され…副作用のループにはまってしまうので要注意です。私は‘薬剤過敏性’(薬に敏感に反応して副作用が出やすい状態)はレビー小体型の専売特許だと思っていたのでが、実際にはパーキンソン病の方でも半分くらいは薬剤過敏があるとのことで、驚きました。

 

「元々パーキンソン症状があって薬を内服している方では、精神症状が出てきた場合に認知症だと早合点して認知症の薬を飲み始める前に、パーキンソンの薬の見直しをすることが先決である」と肝に銘じましょう。

 

精神症状を引き起こさないために)

高齢でパーキンソン症状がある方では、少量のレボドパ あるいはアマンタジンのみとする。
・レボドパ
短時間で効果が得られる薬のため、効いたという実感を得やすい薬。
持続時間は短い。(初期で3-4時間, 中期以降は1-2時間) 中期以降は1日5-6回で少量頻回投与が必要となることもある。
効いている実感がないとすれば、3-4種類の薬を併用することで、肝腎のレボドパの効果が妨害されている可能性も考えなくてはいけません。

 

・アマンタジン(シンメトレル)
元々はインフルエンザの治療薬だが、筋肉のこわばり、抑うつや意欲低下、傾眠などに効く。
150mg以下の低用量では、副作用が出にくい。

 

高齢者で特に精神的な副作用が出やすい薬)

・ドパミンアゴニスト(ドパミンの受容体(受け皿)を刺激する薬)
 高齢者では幻視・妄想などの精神的な副作用が多く、他の副作用も出やすい。

 

・コリンエステラーゼ阻害薬(中核症状改善薬)
 上記のように、パーキンソン薬の内服によって認知症もどきとなり、コリンエステラーゼ阻害薬(中核症状改善薬)を処方されると、歩行障害が出やすくなります。

 

大切な考え方)

 これはレビー小体型や他の認知症治療とも共通する考え方ですが、「100点満点を目指さない」ということが大切です。何かの症状を完璧に消し去ろうと薬を増やしていくと、あるところから副作用が出て、その副作用を病気だと思って別の薬が処方され…という薬剤カスケードの罠にはまってしまうためです。木を見ず森を見よ、の考え方で、ここまでは薬で何とかしてもらったし、ここから先はまあ仕方ないか…というほどほどの考え方が、安全なのかもしれません。

 

本当にレビー小体型認知症?
パーキンソン病 少しずつ減薬すれば良くなる!」(ブックマン社 中坂義邦 著)
 ご本人もしくは家族にパーキンソン病 もしくはレビー小体型認知症と診断されている方がいる場合は必読の本。専門的なところまでしっかり書かれているので、気軽にさらっとは読めませんが、自分もしくは大切な家族の命を守りたいと思えば、読む以外の選択肢はありません。

 

注意!)
 ドパミンに作用する薬を突然大幅に減らしたり中止することで、高熱や筋緊張、意識障害をきたし命に関わる悪性症候群を引き起こすことがあります。自己判断で勝手に中止せず、主治医と相談しながら慎重に薬を調節しましょう。