中核症状改善薬の副作用

 中核症状改善薬は、効き方のメカニズムから大きく2種類に分けられます。

 

●コリンエステラーゼ阻害薬
 ドネペジル・リバスタッチパッチ(イクセロンパッチ)・レミニール
●NMDA受容体拮抗薬
 メマリー

 

●コリンエステラーゼ阻害薬で起こりうる副作用

1)体の動きの悪化(錐体外路症状)
 歩行など体の動きが鈍くなる。姿勢が傾く。
 嚥下が悪くなる。
2)意識レベルの悪化(脳幹網様体症状)
 意識レベルが下がることでせん妄の状態となる。
3)前頭葉症状の悪化
 怒りっぽい、興奮、攻撃性などの陽性症状が強くなる。
 興奮性については、3種類の中核薬の中でドネペジルがもっとも強いと言われています。
4)心機能悪化
 心不全、徐脈などの不整脈  
 →使用開始前後で、心電図を確認し、QT時間の延長・徐脈がないことを確認してもらいましょう。
5)その他
 レミニールでは嘔気・尿・便失禁, 体重減少

 

●メマリーで起こりうる副作用

 傾眠、めまい、易怒・興奮・認知機能低下
 副作用が陽性・陰性のどちらに転ぶか、どこから飛んでくるかわからないため‘魔球’とも言われています。

 

 講演などでこういう副作用の話をすると「そんなに副作用があるとは知らなかった。」「使うことが怖くなった。」という感想を頂きます。でもその通りなのです。実はどんな薬剤にも、必ず副作用があります。副作用が全くない薬はありません。薬で得られるメリットとデメリットを天秤にかけて、メリットの方が大きいと判断した場合のみ使うことが原則です。All or nothing (なんでも薬に頼る⇔薬は怖いので一切使わない)の思考は、時に危険です。
常にこの天秤を意識しましょう。
中核薬の副作用

 

 中核症状改善薬の使用について、実は大切なことは「中核症状改善薬に過剰な期待を抱かない」ことかもしれません。

 

 もの忘れ外来の初診の際に
「息子が、今はいい薬もあって治るって言うから…。早く飲んで治しておこうと思って。」
と子供さんに勧められて受診したという老夫婦がいて、その言葉に2人揃ってうんうん…と頷いていたりするシーンが見られます。
 中核症状改善薬には、認知症を根本的に治す(治癒させる)効果はありません。脳内で不足している神経伝達物質を補うことで、症状を緩和させるという極めて限定的な効果しかないのです。

 

 コウノメソッドの医師の中でも、最初の段階で
「記憶はよくなりません。」
とはっきり伝えておくというポリシーの先生がいますが、それは一理あるのです。
ただ付随するBPSDなどの症状を和らげたり、生活の質を上げるという意味で症状をよくできる可能性はあるので、記憶がよくならない=認知症はよくならない、なすすべがないという訳ではないということも知っておいて頂きたいのですが。

 

 過剰な期待を持ってしまうと、どうしても薬の存在を安心のよりどころにしたり、すがりたくなってしまうのが人間。望ましくない副作用が出たとしても、薬を減らしたり中止する提案に「でも薬をやめたらもっと悪くなるんじゃ…」と不安感から減薬や中止に踏み切れず、ますます事態を悪化させてしかねません。