一医学生の違和感

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一医学生の違和感

 

医学部高学年だった私は、当初糖尿病の診療に興味津々でした。
一医学生の違和感

 

 糖尿病というのは患者数も多く、将来的に必ず頻繁に患者さんに遭遇します。進行すれば合併症で失明や透析に至るなど、診療の質が患者さんの人生を左右するので町医者の責任は重大でやりがいがある!と意気込んでいたのです。
実習したのは糖尿病の教育入院機能を備えた医療機関だったので、現場ではどんな生活指導がされているんだろう?内科の武器は言葉だから、患者さんのやる気スイッチをオンにできるような特別なコミュニケーション方法があるのかな?現場を見て自身のモチベーションをグーンと上げれば、その後の糖尿病の勉強にも力が入るだろう。そんな期待を抱いて実習に臨んだのです。

 

 ところがそんな私の期待は、実習開始の数日で、へなへなっとしぼんでしまったのです。

 

理由1)カロリー制限の理論が理解できなかった

 準的な食事指導として使われているカロリー制限法(今も標準です)の理論が、私には全く理解できませんでした。糖尿病が血糖が高い病気であることはわかります。でも血糖が高いからって、なぜカロリーを制限しなくてはいけないんでしょう?
持参した朝倉の教科書にも、そのつながりは一切書かれておらず、最初からつまづきました。あまりにも初歩的な疑問に「頭が悪いと思われる…」と指導医に尋ねることもできませんでした。あの時もし思い切って質問していたとしても、きっと納得がいく答えは得られなかったと思います。
 なぜなら「カロリーと血糖には、関係がない」が正解だからです。カロリー制限法を遵守しても、血糖コントロールをよくできるというエビデンス(医学的証拠)は存在しません。むしろ推奨されている60%の糖質では、理論的に食後高血糖を抑えることも、ひいては合併症の進行も予防することはできません。

 

2)カロリー制限法を守れる気がしない

 当時の私は血糖とカロリーのつながりは疑問ながらも「血糖が高いってことは栄養過剰だからとりあえず痩せろということなんだろう。」と無理に自分を納得させて次に進もうとしました。
次に立ちはだかったのは「無理なく続けられるか?」という実行可能性の壁です。自分が続けられる自信がなければ、患者さんに指導することはできなさそうです。
 ここでもあっさり挫折。食品交換表を常に確認したり、料理の度にグラム数を計量することは、計量スケールすら自宅に持っていない私にはハードルが高く思えたのです。私は確かに大雑把な人間ですが、私と同じくらい大雑把な人は山のようにいるでしょう。調理実習でもないのに、これを数年数十年と延々と続けられる人っていったい何割いるんだろう?10人いて1人いるだろうか…と思いました。
一医学生の違和感

3)指導医の先生が太っていた

 もう時効なので言っていいかと思いますが、実習であたった指導医の先生の体格が、立派な肥満体型だったのです。
一医学生の違和感
 おまけにその先生の仕事ぶりは、学生の自分から見て覇気が感じられず「仕事だからとりあえずやっている…だる…」という倦怠ムードが漂っていました。
病棟で担当した教育入院の患者さんも退屈だったのか、学生の私相手に色々お話してくれたのですが、

 

「(指導医の)先生の方が教育入院して痩せた方がいいんじゃないかと思うんだよ〜。」

 

ともらしていました。(学生は半分素人なので、患者さんがよく本音をもらしてくれます)
 冗談半分のコメントとは言え、やはり糖尿病の教育入院の指導者が肥満と言うのは問題があります。何を始動されても、説得力に欠けますから。私自身、先生の提唱するカロリー制限法への疑念がますます色濃くなりました。(いい方法なら、自分でやっているはずなので)
もやもやとした気持ちのまま実習を終え、糖尿病への興味を失ってしまった…というのが残念な学生実習の思い出です。

 

 医師になってかなり年数がたち、自ら情報収集をして江部先生の糖質制限の理論に出会った時、目から鱗が落ちる気持ちでした。医学生時代のの納得いかなかったモヤモヤとした気持ち、落胆感がありありと思い出され、自分の違和感は間違っていなかったんだ…と少し安堵したことも事実です。モヤモヤを追求するほどの意欲がない学生だったと言われればその通りですが、一医学生の違和感に、現代の糖尿病医療が抱える問題が凝縮されているように思います。