間違いに気がついた時にどうするか?

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間違いに気がついた時どうするか?

 

 この10年間で、糖尿病や脂質異常の考え方は、世界的に変化の時を迎えました。その変化の大きさは革命的と言ってもよく、価値観の転換が求められるほどの大きな変化は‘パラダイムシフト’と呼ばれます。

 

 1950年台からずっと続いてきたカロリー制限という食事療法に対して、2013年にアメリカの糖尿病学会が糖質制限を治療の選択肢として認めました。一方日本糖尿学会は、その時点で「十分な証拠が揃っていないので糖質制限は勧められない」として保留とし、2019年になっても、まだ科学的な検討が不十分として「炭水化物摂取量と糖尿病の発症リスク、管理状態との関連性は確認されていない」というあいまいな記述にとどまっています。変化に対応していないという意味で、従来のカロリー制限から前に進んでいないのです。
間違いに気がついた時どうするか?
 一方で、2016年には日本糖尿病学会の門脇孝理事長が‘一個人として’自身がゆるやかな糖質制限をしていることを雑誌の取材で明らかにされています。実はこの20年間、江部先生によって日本で糖質制限が一般に広まる過程で、医師が自分が糖尿病になるとしばしば糖質制限をする姿を日常的に目にしてきました。傍から見て痩せたな…と思う医師に、何をしたのか聞くと、高確率で糖質制限なのです。
 自分や家族ごととなれば、しっかり成果につながる糖質制限を行う。しかし病院や学会という組織の方向性としては、体制を改められず前に進めない。日本における個人と組織とのこの乖離が、残念でなりません。

 

 公立の医療機関や保健指導は、権威ある学会の方針の元に動きますから、こうしている間にもカロリー制限で指導を受けた患者さんは高血糖が改善されず、合併症が進行します。動脈硬化や失明、透析という大きな穴が口をあけるステージへと、一歩一歩進んでいっています。現時点で学会が推奨するカロリー制限と糖質の摂取割合を遵守すれば、薬なしで合併症を回避することは難しいことがわかっています。糖質制限ではきちんと順守すれば薬なしでよいコントロールを行うことは十分に可能であるにも関わらず。薬剤投与が前提の医療モデルというのは、いったい誰のためのものなのだろうと憤りさえ感じてしまいます。

 

 産婦人科医である宗田哲男先生の著書「ケトン体が人類を救う」の中で2013年に胎児〜新生児がケトン体をエネルギー源にしていることを裏付ける発表をされた時には、学会会場に100人もの医師の群衆が押し寄せ、発表が終わらないうちから「糖質制限なんか許せん!」「障害児になる!」と口々に野次を飛ばして戦場のような有様であったというエピソードが書かれています。(いつかこのシーンは映画化して再現してもらいたいです。かなり迫力あるシーンになるはず…。)そのシーンをイメージすると、もはや魔女狩りか宗教弾圧にしか見えず、医者や学会とは何なのだろうか…とため息が出ます。
間違いに気がついた時どうするか?
 専門家としての信頼が地に落ちる前に(もう落ちていないかが心配ですが)現在の姿勢を改め、これまでのミスリードを潔く認めて現時点での最善の方法を示す努力をしなくては、とりかえしがつかないことになる…と危機感を持っています。

 

 私も外来ではよく謝っています。何年も糖尿病で診察してきた方が、肉の脂身が好きで、だから自分が糖尿病になったんだと思って何年も我慢してきたことがわかりました。
「新しい知識では、肉の脂質は血糖を上げないことがわかっているんです。その代わり、ご飯やパンなどの主食は控えて下さいね。」
「え!脂身のある肉、食っていいの?!俺、ずーっと我慢してきたんだ。」
「それはすみません…。今日からは美味しく食べていいですからね。」
間違いに気がついた時どうするか?  
 進歩するということは、昨日までの自分や医療にNOをつきつける作業でもあります。昨日と言っていることが違うじゃないかと言われるのを恐れれば、ずっと変わらないことを選ぶしかありません。つまらないプライドは捨てて、今日も時には謝りながら、その時点で一番いいと思われる方法を提案し続けていこうと思います。