MCIと境界型糖尿病の共通点

 生活は自立しており認知症には至っていないが、もの忘れが強くなっている状態を、MCI(軽度認知症障害)と呼びます。その後1-2割が数年後に認知症を発症します。

 

 外来でこのお話をすると、
認知症でなくてよかった〜。
と安堵の表情を浮かべ、笑顔になる方が多いのは事実です。

 

MCIと境界型糖尿病の共通点

 

 相手を落胆させるのは辛いので笑顔が見られるのは嬉しいのですが、その先のことが気になり、複雑な気持ちとなるのは事実。
 MCIと糖尿病境界型には、多くの共通点があります。 
糖尿病の境界型(グレーゾーン)の方に対して強調しているのは、「とにかく今が一番の勝負どころ。今なら途中下車できます!」というメッセージ。糖尿病は、長期にわたって自覚的には痛くもかゆくもない病気。まして境界型ではHbA1cという数値もごくわずかしか上がりません。

 

糖尿病を発症した方に過去の話を聞くと、健診などでHbA1cが少し高くて受診するも

 

「糖尿病の気(け)があるけど、まだ大丈夫って言われた。」

 

と軽く言われ、本人も病気という意識がないまま、なんとなく不摂生な生活に戻ること数年。5-7年の月日がたったところで、本格的な糖尿病を発症するというのが典型的なパターンです。糖尿病を発症した時点(本人が初期と思っている時点)で、すい臓の働きは既に1/4まで低下しており、そこから完全に治癒することは望めません。だからこそ、境界型と言われる「まだ回復が望める」段階で、全力で生活改善に取り組んで頂きたいのです。

 

 そして認知症も、脳の中では40歳ころから無症状ながらじわじわと細胞変化が起きていて、MCIと呼ばれる段階に来ている頃には、脳の病理学的にはかなり進行した段階で症状が出現するという構図は糖尿病と同じ。そしてリコード法に代表される生活習慣改善で、早期であればあるほど改善が望めるものの、症状が進行してからでは回復が圧倒的に不利になってしまうところまで、糖尿病と同じです。アルツハイマーは最近は「第3の糖尿病」と呼ばれ、インスリン抵抗性という機序まで共通しているので、それも当然と言えるでしょう。

 

 ですからMCIと診断されて「あ〜よかった〜!」と安堵して開放感に浸るのではなく、ここからが勝負だ!と生活習慣を改善するスイッチをしっかりと押して下さい。それができるかで、あなたの5年後10年後の未来が決まります。

 

MCIと境界型糖尿病の共通点

 

 私も患者さんの長期の戦いに力強く伴走できるよう、自らの健康管理をしっかりして構えようと思います。